
実践報告9.小石川植物園 (2026/7/5)
📍小石川植物園で実施したDTWのマップはこちらからどうぞ。
東京都文京区にある小石川植物園でのディープ・タイム・ウォークの活動をご報告します。
「ディープ・タイム・ウォーク」@小石川植物園
今回は、日本国際理解教育学会 第35回 研究大会における、自主企画フィールドワークの一部として、ディープ・タイム・ウォークを実践する機会をいただきました。
学会会場となった拓殖大学の近くには、東京大学大学院理学系附属植物園である「小石川植物園」があります。
この小石川植物園は、江戸時代に幕府の薬草園として利用され、関東大震災時には多くの避難者を受け入れた歴史を持つ場所です。
また、植物学者の牧野富太郎も、園内での植物研究に携わっていました。


園内にある関東大震災の石碑
今回の自主企画フィールドワークの詳細は、以下のページからご覧いただけます。
~今回のルート開発~
野川公園のように、植物や野鳥を観察する人、親子でピクニックを楽しむ人、静かにベンチで読書をする人など、幅広い世代の憩いの場になっている小石川植物園。
ルート開発のため、そろそろ年間パスポートを購入しようかと思うほど、何度も通いました。時には勤務後にも訪れることもあり、仕事終わりに森の中を歩きながら、私自身も木々に癒されていました。
東京大学の研究施設でもあるため、園内では植物に「モニター中」と書かれたタグが付けられていたり、調査のために記録や観測が行われていたりする様子を何度も見かけました。訪れる度に、木々や植物の多様性に驚かされます。
下見には、知人の森林セラピーの専門家にも同行いただきました。クルミの木を見つけて一緒に驚いたり、古い切り株の上に丁寧に並べられたまだ青い小さなカリンの実を見ながら「この切り株は何の木だったのか、だれがここにカリンの実を置いたのだろう」と想像したりしました。

園内で一番のお気に入りは、スズカケノキの並木です。
じめっとした梅雨の日、正門から向かって北西方向へ歩き、少し汗ばんできたころ、有名な精子発見のイチョウの木を通り過ぎると、目の前にスズカケノキの並木が広がります。真っ白な幹とまっすぐ伸びる木々の姿に爽やかな気持ちになります。

小石川植物園のルートでは、これまでの鎌倉や熊野古道のように、ゴールに向かって一本道を進むことが出来ません。そのため、園内の同じ場所を何度も歩いているように感じないように、ルート設定を工夫しました。
例えば、同じスズカケノキの周辺でも、東側から歩いてくるのと、西側から歩いてくるのだったり、一本内側に入ったサルスベリゾーンを歩くのでは、見える景色も感じ方もまた大きく変わります。歩く方向や、道を少し変えるだけで、一つの場所に異なる表情が生まれることを実感しました。
また、今回は初めて梅雨のシーズンでのDTWを実施しました。本格的な夏に向けて草木が勢いよく成長する季節。
当初は、北西側の針葉樹林の小道を通る予定でしたが、下見の時よりも草木が生い茂っていたため、直前に、道幅が広く歩きやすいルートへ変更しました。
また、にわか雨によって道がぬかるむ可能性も考慮し、足元の悪い場所をできるだけ避けるようにしました。
自然の中で行うDTWでは、季節や天候によって植物の姿も、道の状態も大きく変化します。こうした変化に応じてルートを調節することも、大切な準備の一つだと感じます。


梅雨の時期の園内の様子ーー紫陽花や新緑が美しい
~新たなアースステーション(説明ポイント)の追加~
今回は、「生命の積極的な死の開始」についての説明を新たに追加しました。
初期の生命は、主として自らの遺伝子情報を複製してクローンのように遺伝子を残す「無性生殖」によって増えていました。
その後、異なる個体の遺伝子情報を組み合わせて子孫を残す「有性生殖」が進化しました。有性生殖によって遺伝的な多様性が生まれることは、変化する環境で集団が存続する可能性を高めることができます。
この説明を受けて、ある参加者から次のような発言がありました。
細胞レベルで、子孫が将来どんな環境に置かれても、生き残れる可能性を高めようとする仕組みに「利他の精神」のようなものを感じました。
科学的な仕組みを知るだけではなく、それをどのように受け止め、いまの自分や社会と結びつけるのか、参加者の言葉からDTWならではの学びが生まれていることを感じました。

イロハモミジの並木から歩き始めました

シダ園の前でシダの陸上進出の説明を実施
~参加者のみなさんの声~
今回は、福岡県や滋賀県から、中学校の社会科・英語科の先生方や大学関係者などが参加くださいました。
参加後、実際にご自身のお子さんとDTWを実践くださった先生もおり、とてもうれしく感じております。
(ちなみに、北九州市在住の先生によると、皿倉山展望台までの道のりは片道約4.6kmだそうです!)
他にも参加者からは、次のような感想が寄せられました。
「ディープ・タイム・ウォークを体験した後、今朝、通勤中に息を切らしていたことを思い出し、『Shallow Time Walk』 だと感じました。そのように振り返られる自分がいるだけで、本当に感謝です。」
ディープ・タイム・ウォークで得た時間の感覚が、後日、通勤という「日常」にも残っていたことが伝わる言葉です。

参加者の皆さんと、春には満開のソメイヨシノの前で
~さいごに~
現在、ディープ・タイム・ウォークを多くの人に知ってもらえるよう、日本支部設立に向けて動き始めています。
ディープ・タイム・ウォークの可能性を、最大限享受いただけるよう、どのようなガイドがベストなのか、これからも自分なりに探っていきたいと思っています!!